【給食】のメリット・デメリット
日本人にはなじみのある「給食」。そもそもなぜ「給食」ってあるのでしょうか?給食の歴史や給食のメリット・デメリットについてご紹介していきます。
そもそも「給食」とは
「給食」の意味
「給食」とは何か、web辞典で検索をしてみました。
きゅう‐しょく〔キフ‐〕【給食】
読み方:きゅうしょく
https://www.weblio.jp/content/%E7%B5%A6%E9%A3%9F
文部科学省のホームページに「学校給食について教えて!」というページがあったので併せてご紹介します。
給食には学習の教材の役割(やくわり)があります。
https://www.mext.go.jp/kids/find/kyoiku/mext_0003.html
肥満(ひまん)、朝食欠食といった子供の食生活を改善(かいぜん)するために、給食を通して、食に対する正しい知識(ちしき)と望ましい食習慣(しゅうかん)を身につけることができるように学校でも食育に取り組んでいます。
学校給食と世界
日本の学校給食は、世界からも注目されていると言われています。
実は海外の方が日本の給食を視察に来る事もあるんです。
学校給食について
学校給食の歴史
1889年、山形県鶴岡町(現在は鶴岡市)の私立忠愛小学校で、生活困窮の児童に無料で昼食を食べさせた事が起源と言われています。
文部科学省の資料と、鈴鹿市給食センターさんが出されている資料が写真なども含めて見やすくまとめてられているのでご紹介します。
『日本の学校給食と食育』リーフレット(日本語)/文部科学省
(https://www.mext.go.jp/content/20211012-mxt_kenshoku-000008678_1.pdf)
「学校給食の歴史を見てみよう」/鈴鹿市給食センター(https://www.city.suzuka.lg.jp/kouhou/gyosei/open/shiryou/hakkobutsu/pdf/kyoiku01/syokutsu_18_01.pdf)
さらに詳しい流れは日本栄養士会会長の中村先生の著書に記載があります。
学校給食の目的
学校給食には「学校給食法」という法律があります。学校給食の目的は第二条に記載されており以下でご紹介します。ちなみに「学校給食法」という名称ですから「学校」の給食に適用されます。
ちなみにこの法律は改正部分もありますが、昭和29年に施行されています。
(学校給食の目標)
第二条 学校給食を実施するに当たつては、義務教育諸学校における教育の目的を実現するために、次に掲げる目標が達成されるよう努めなければならない。
一 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること。
二 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、及び望ましい食習慣を養うこと。
三 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
四 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと。
六 我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
七 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000160
学校給食のメリット・デメリット
学校給食のメリット
多くの方が、「野菜は食べた方が良い」と思うのではないでしょうか。それは何故でしょうか。
家庭でもバランスに気をつけて食事を用意されることが多いと思います。それも何故でしょうか。
もちろん、学校で学習したり、テレビなどのメディアから学ぶことも多いと思います。ですが、一番大きいのは学校や家庭で実食していることです。脳で理解するだけでなく身体で感じる事は非常に重要です。給食はそういった体感するメリットが非常に大きいです。
特に4時間目に食事について学んだ後の給食は、学んだ事をすぐ感じる事ができます。嫌いな物でも頑張って食べたり食事についての話が盛り上がります。
一方で4時間目というと栄養士や調理師は激戦まっただ中な可能性も高く、専門職が児童にお話に行くのは難しい時間帯なのが実情です。
栄養教育のために栄養教諭のポジションがあります。しかし栄養教諭も現場によっては給食調理に参加されていることも多いようです。現場によっては状況異なると思いますが、午前中は身動きがとりにくく、教育への参加は実際どこまで可能なのだろうかと感じます。
給食は保護者が用意してくれるわけではなく、児童たちが自分で用意します。左側にご飯、右側に味噌汁と並べるなども実体験していきます。他にも色々体験して学んでいくことができます。
学校給食では、様々な食材に触れることも目的とされています。家では食卓に上がりにくい料理を知る事ができ、学びにつながります。
学校の長期休み前になると「給食無いから子どものお昼どうしよう」「給食のありがたみがわかる」という言葉を聞いたり目にしたりします。
現在は共働き家庭も多く、保護者は昼食準備を負担に感じることもあるでしょう。その支えになっている事も給食の意味として大きいのだと思います。
また、貧困等の理由により子どもが「給食によって命を救われた」という事も実際あるようです。1日1食でもバランスがとれた食事が出来るのは大きな事なのだと感じます。(もちろん、3食バランス良く食べられる事が一番望ましいですが・・・)
学校(保育園等)給食のデメリット
「給食を残さず食べましょう」という、いわゆる「完食指導」は以下のような利点があります。
- 食べ物を無駄にしない
- 作ってくれた人に感謝する
- 栄養価を充分摂る
そして、それを実行してきた事は子どもの成長に大切な事だと思います。
一方で、行き過ぎた完食指導が問題視もされています。もちろん、全ての先生が行きすぎた指導をしているわけではありません。子どもの様子を見る、時間を区切るなど対応をされている事も多いです。
学校現場においては「嫌いだから食べない」「なんであの子は食べなくていいの?」「ずるい」・・・こういった流れが蔓延してしまうと現場の教職員は対応が難しくなってしまうのではと思います。完食指導にはそれを抑止したい側面もあると考えられます。
食べているうちに慣れてきて、嫌いな物でも「食べ慣れる」こともあります。一方で、より「大嫌い!!!」になってしまうこともあります。また、その食品に恐怖感・嫌悪感を植え付けられてしまい、大人になっても受け付けないという事があるのも事実です。
さらに困った事には、特定の食品だけでなく、食事全般が嫌いになってしまう、人前で食べる事ができない、給食がイヤで学校に行きたくないなどの弊害も起きてしまっています。
その子の「好き嫌い」が治る程度の物なのか、本当に心から拒否しているのかは、保護者であっても判断が難しいものだと思います。児童を何人も同時に見なければならない担任や、児童の普段の様子を見ることができない栄養士では、そういった判断はさらに難しいと思います。
↓ 会食恐怖症に関してはこちら ↓
学校給食実施による評価
学校給食を実施した事によって生じるデメリットは文部科学省からのデータからではイマイチ読み解くことができません。
「給食 アンケート 調査」等で検索をすると地方自治体が公表しているアンケート結果を見ることができます。その結果の中、特に児童からのコメントが良い資料になるのかなと感じます。一方で、子ども達も遠慮して本当の事が言えているのか、本当に聞きたい言葉が書けているのかは不透明ではあります。
個人的には文部科学省の元、給食に関する調査があったら結果を見てみたいなと思います。しかし各学校で提供状態が異なることから一斉調査は難しいのだろうなぁと残念に思います。
産業(事業所)給食について
産業給食、事業所給食など呼び方が数種あります。社員食堂、職員食堂などを想定しています。
産業(事業所)給食の歴史
産業界における給食は紡績工場などから始まったと言われています。1872年に官営富岡製糸場において給食が提供され、世界大戦中には軍需工場で給食提供があったと言われています。戦後1955年頃から全国的に普及しました。
産業(事業所)給食の目的
学校給食のように「学校給食法」のような特定の法律は産業給食にはありません。健康増進法(旧・栄養改善法)に記載があります。事業所給食は働いている人の生活習慣病などの予防を目的としているとされています。
産業(事業所)給食のメリット・デメリット
産業(事業所)給食のメリット
基本的に社員食堂・職員食堂は、同じビル内や会社敷地内にあります。外部の店舗に行く事と比較するとエレベーター待ち時間や移動時間・距離などが短縮されます。
オーダーを取ってから調理をするのではなく、ある程度できあがった物を提供することが多いです。そのため待ち時間が少なくてすみます。
社員食堂は福利厚生の一環として会社が設置している事が多いです。会社がどこまで補助金を出しているかによって価格は変わってきます。極端な例ですが、無料で食事が出来る会社もあります。
栄養士の私としては本当は1番にメリットとして挙げたい項目ですが・・・。
社員食堂・職員食堂には色々な方式があります。栄養士のいる食堂の定食であれば、バランス良く作成されていることが多いと思います。一方、カフェテリア方式という自分で選択するタイプの食堂では、好きな物ばかり選択することでバランスが偏る可能性が高いです。
ちなみにここでバランス良い食事を選択する時のイメージは学校給食が大きいのではないかと思います。
こういった場合には、「どう選択すればバランスが良いか」モデル例の提示が推奨されています。
産業(事業所)給食のデメリット
食堂の規模・設備等によってはメニューが少なく、食べたいものがない日もあるかもしれません。
食堂の規模・設備等によっては、沢山の種類の料理を提供できない可能性もあります。
会社などでは、昼食時間は休憩時間となります。休憩時間には気分転換をしたいと感じる場合も多いです。同じビル・内じフロア内での移動では気分転換にならない、休憩した気がしないと感じる方もいらっしゃいます。外の空気を吸いたい方は外部に出ることもあります。
業務上、ビルから出ることが出来ない方や、近くに飲食店がなく出て行く事ができない場合もあります。
メリットの所でも記載しましたが、メニュー選択が個人に任されます。毎日、かけそばとオニギリという方もいらっしゃるのが現実です。
どのくらい食材が必要かわかっていて、実際にその人数が食べてくれた場合、ロスは少なくなります。
そのため、産業給食でも定食スタイルや事前予約制であれば比較的ロスは出にくいです。
産業給食の多くはコンビニやスーパーの食品ロスと同じような問題があります。「誰がどのくらい買うか予想して準備」する必要があるからです。今までのデータを元に予測をしますが、全くその通りにはいかないのが普通です。
気温が高く暑ければ冷たい物が食べたくなったり、さっぱりした物が食べたくなったりします。一方、夏であってもクーラーで身体が冷えると暖かい物が食べたくなることもあります。天気や気温、気分で食べたいものは変わります。出張や外回りで社内の人数も変わります。雨天では社外に出る人数が減って、通常より混み合います。基本的に給食は1・2週間前には計画・発注が済んでいるため天気がわかってからの調整はなかなか難しいものがあります。
また、売り切れがあればお叱りの声が届きます。食べたかったものが品切れは確かに悲しいですよね。その為、他のメニューが残っていても「売り切れごめん」はしにくい現状があります。
コンビニやスーパーの食品ロスはテレビで取り上げられますが、社食やレストランの食品ロスも結構深刻な問題だと思います。食品衛生上、作ってから決まった時間以上経過した物は販売できません。ただ廃棄するだけでなく肥料に再生するなどの対応もあったりします。しかし可能であれば、食品として食べたい所です。
まとめ
給食の歴史や、メリット・デメリットについてご紹介してきました。
こうして見てくると給食は日本の発展を陰で支えてきた存在だと感じます。給食のメリットは非常に大きいですが、デメリットも少なからずあります。学校給食は教育の一環で非常に大切です。しかしそれが会食恐怖症や不登校の原因となるのは残念な事です。
「給食」といものが組織的に開始されて、もう何十年と経ちました。色々進化をしてきた給食ですが、さらなる進化、もしくは選択肢を求められているのかもしれません。
学校給食の完食指導に関しては自分のクラス担任と隣のクラス担任は違うことを言う。隣の学校は違うことを言う。これでは困りますから行政がモデル例を示すなどしてくれたらいいのかな・・・と思ったりもします。
万人が納得できる方法を実施できるかは難しいですが、選択肢があれば良いなと感じます。
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