今回は、保育園や学校で栽培した食物や、クッキングで作った料理に関してです。
食育とは
食育は、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けられるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てるもの。
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/network/about/index.html
上記は農林水産省ホームページからの引用です。
「食育」は食育基本法をベースとして考えられています。
保育園や学校での「食育」というと、クッキングなどを連想しがちです。でもそれだけが「食育」ではなく、日々食事をすること自体も「食育」の一環です。
畑で作った物、園庭や校庭でとれた物
保育園・幼稚園、学校では「食育」活動の一環として畑を作ることもあります。
また、園や学校の敷地内に生えている木から果物等を取って食べる事もあります。
しかし、それによりアレルギーや食中毒が起こってしまうこともあります。
アレルギー対策の前提として・・・
現状保育園では、園でのアレルギーの発症を防ぐため「園で初めて食べる食品」がないようにしています。基本的には入園時に「給食で使用する食材表」を渡し、食べた事があるか保護者にチェックをしてもらいます。食べた事がないものは給食提供開始までに自宅で食べてもらうようお願いします。また、食材の提供について保護者に同意書にサインをお願いすることもあります。
就学前の幼いお子さんの身体は成長中であり、胃腸が未発達でアレルギーを起こしやすいと言われています。その為、保育園では食材のチェックが重要になります。
修学頃には胃腸も安定してきます。また、小学校給食は様々なメニューや食材に触れる事が目的の一つでもあります。その為もあってか、保育園のような食材表によるチェックは小学校では特にないようです。
ビワでアレルギーが起きた
園で収穫したものや、給食で提供したビワによるアレルギー発生事故が過去にあります。
保育園での食材チェック表の理解や実施は、園によって差があります。口に入れる物全てに対するチェックをしないといけないのですが、給食食材のみがチェック対象になりがちです。ですので、園で収穫するものについてはチェックを失念していたなどのミスが考えられます。また、食べた経験がないのに保護者が「食べても大丈夫だ」と報告してしまった可能性もあります。
現在は「花粉・食物アレルギー(PFAS)」で、花粉症からビワアレルギーになってしまうこともわかってきています。花粉症の方はご自身やお子さんの身を守るために自分自身でも気をつけていく必要があります。
↓「花粉・食物アレルギー」についてはこちら ↓
ジャガイモで食中毒が起きた
ジャガイモの芽には「ソラニン」や「チャコニン」という自然毒が含まれています。また、ジャガイモが緑色の部分にも「ソラニン」や「チャコニン」という自然毒が出来てしまっています。
ジャガイモが緑になる原因は光に当たったせいだと言われます。土がちゃんとイモの上にかぶっていないと日光が当たって緑色になります。
園・学校で育てる際は農家さんのようなプロでないため、芋に土が被っていない事に気づかない可能性があります。さらに「緑色になっていて危険だ」という事に気づかない可能性が高いです。
こうしたことから毎年のように事故のニュースを耳にします。
判断が難しくなってきているのかもしれない
植物を育てる経験が少ないと、ジャガイモの件は気がつかないこともあるでしょう。
園や学校敷地内の植物を見る事・食べる事・育てる事は非常に重要な「食育」ではあります。一方で、ビワやフキなど、家庭で食べる機会が少ないと思われる食品を喫食させることは、アレルギー発症の危険が伴う事もあるようです。
園児が作った物は「安全の観点」で廃棄
上記のような事故事例から「園児の作った物は食べさせない」と決めている自治体もあるそうです。
とある自治体の実際の事例です。子どもが育てたジャガイモを実際には給食に使用せず。収穫したジャガイモということにしつつ、八百屋に発注したジャガイモを調理して提供するそうです。
該当地域勤務の栄養士さんは、心苦しい部分もあるとのことでした。しかし事故防止策である以上は致し方ないという部分も・・・。
園でお餅つきを実施した場合、作った餅は鏡餅用として使い、食べさせないなどの手段をとる事もあります。食べさせない理由としては、給食室以外のスペースで作り、沢山の手が入るため衛生上の懸念があるからです。それにプラスして、誤嚥防止で、食べさせないという側面もあります。
「はたしてそれでいいのかな」「作ってくれた子どもに申し訳ないな」とも思います。一方で、身体の不調に対するリスク回避ができるのも事実です。
コロナ禍のクッキング
コロナ禍の保育園では、クッキングをどうするかで意見が割れました。
・自分の分を、自分で作る分には問題ないと考え、本人が食べるためのおにぎりやドレッシング作りをしている
・マスクをしながら常に一緒の空間にいて、顔を近づけて話あいたり、おもちゃも共有しているのだから、平常時と大差ないと考えてほぼ例年通り行った
・判断がつかず、実施していない
このような意見を聞きました。一番多い意見は3つ目です。コロナ禍では、何をやっていいのか悪いのか、わからないことも多く、判断できかねる園が多いようでした。
安全をどう考えるか
インターネットやSNS含め、情報が錯綜する現代。事故の情報が拡散され、すぐにその対策が検討できるのは非常に良い事でもあります。
一方でリスク回避の為、実施出来ないことも増えていきます。保育士、栄養士、どんな資格を持っていても、実際には経験が重要です。実体験がなくなる事によって知識が浅くなってしまい、危険回避できない可能性もあります。
保育園・学校は人員不足も指摘されています。子ども達はいつも一緒にいる先生ではない、専門の人が来てくれるとしっかり話を聞いたりします。地域の農家さんや専門知識のある方の助力が得やすくなると色々な意味で良い方向に変わっていくのかなと思います。
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