給食の直営と委託、結局どっちがいいの?
給食には直営と委託があります。その違いと、それぞれの利点として感じた事をご紹介していきます。
ちなみに委託は産業(事業所)給食、直営は保育園給食での経験をしました。完全に同じフィールドでの比較ではないことをご了承ください。
直営給食とは
直営給食の場合、自分たちの組織内で給食部門を持っていて、提供します。
例えば・・・
学校給食の場合は学校内の給食室で、学校所属(または市区町村所属)の栄養士や調理師が給食を調理して提供します。社員食堂などの産業給食では、総務部等の会社組織に所属した栄養士や調理師が給食を提供します。
委託給食とは
委託給食の場合、給食に関わる色々な事を契約した委託会社等にまかせます。
例えば・・・
学校給食の場合は学校内の給食室で、委託会社の栄養士や調理師が給食を調理して提供します。社員食堂などの産業給食でも同様に、委託会社の栄養士や調理師が給食を提供します。
委託会社にどこまで任せるかは契約によってかわってきます。「献立作成は学校や会社所属の栄養士が行い、調理片付けは委託業者に委託する。」「献立作成含め給食運営に関わる全てを委託する」など、色々な契約があります。
直営給食の方が良い・・・というイメージもありますが
果たしてどうなのでしょうか?
直営の特徴
- 同じ会社・学校の社員・職員と言うこともあり、連携が取りやすい。
- 栄養相談等が実施される場合には参加しやすい。
同じ社内の人間なので、連携が取りやすいという意見を
よく見かけます。
委託の特徴
- 委託会社の大手であれば、色々な店舗での経験ができる。
- 委託会社の社員は基本的に給食に関わる人達のため、お互いに業務をわかっている事が多い。
- 困った事(栄養のこと・衛生のこと等々)があれば、社内の専門部署に相談が可能。
- 給食専門のため、衛生などのスタッフ教育がしやすい。
- 災害時や問題発生時のマニュアル・ルートができている。
- ヘルプ体制がある。
社員食堂は委託給食会社で経験しました。
それなりに大きい会社だと分業されているので
安心して現場のことに取り組むことができました。
委託する側のメリット
給食運営の仕事を、任せる事が出来ます。たとえば食品会社であっても給食運営は専門外な部分もあります。食品関係以外の会社には、もっと未知の世界です。そんな食堂運営を専門の会社に委託することで、専門家に任せることができるわけです。
調理だけでなく食品衛生など様々な部分で任せる事ができます。スタッフの採用・教育・管理なども任せる事が可能になります。
委託する側のデメリット
委託給食会社の多くは株式会社です。要は利益を出すことを目指していますので、場合によっては直営の方がパフォーマンスが良かったり、費用がかからない可能性もあります。
直営給食で不安に思うこと
私が経験した直営給食では栄養士が1人の状況でした。この現場で私が不安だったのは、災害や感染症、自分の病気や怪我が起こった時にどうなるのか?という事でした。
①災害や感染症
発災時には備蓄品を使うことが想定されています。問題はその後です。
道路が寸断、取引先に被害があり納品ができないとなった時にどうしたらよいのか。また、新型コロナ感染症流行のような事があった際に、取引先が感染して納品できないとなった時にどうしたらよいのか。それを考え、実行するのが自分1人だという状況でした。
複数業者と契約するにしても限界があります。あまりにも取引額が少なければ、業者は取引してくれない事もあるからです。
②1人仕事担当者の怪我や病気
どんなに注意をして生活していても、思いもよらない事故にあうかもしれません。また、病気にかかってしまうかもしれません。
栄養士1人現場の場合、献立発注ができるのは1人しかいないことが多いです。
そんな自分が病気になったらどうなるのか。誰が発注してくれるのでしょうか。また、それが長引いたら?以前からあった不安ですが、コロナ流行で、その不安が強くなりました。
③設備や衛生に関して
機材の調子が悪い、機材が故障した、設備に不具合がある。そんな時の対応も栄養士が行います。取扱説明書で内容確認し、上司に報告し、修理が必要そうなら電話をし、見積もりをもらい日程調整をする。
設備のチェックだけでなく、衛生に関しての見直し、教育、実際の確認等々。
現場では担当することが多岐にわたり、じわじわと勤務時間を圧迫してきます。また、思うように業務がはかどらないこともしばしばです。
危機管理があるかないか
直営給食であっても、栄養士が1人という体制でなければ、そこまで不安もなかったかもしれません。また、何かあったときの対応策を練る事ができる力があれば良かったのかもしれません。
上記①②③とも、「なるようになるんじゃない?」とか「ちゃんとできるようにしておけば大丈夫」と感じる方は、きっと1人現場でも大丈夫です。
しかし、私と同じように①②③について不安を感じる方は直営の1人現場は向いていないかもしれません。直営で現場に栄養士1人であっても、大きな法人、会社などでフォロー体制があれば問題はないでしょう。
委託→直営の経験後に委託給食のメリットだと感じた事
私の場合ですが、委託給食時代のノウハウがなければ直営給食の1人現場はできませんでした。
委託給食会社のノウハウやツールはとても助かる存在だったのだと、ひしひしと感じました。
フォロー体制
上記①②③の内容に関して委託給食会社の多くは現場へのフォローがあります。(全ての委託給食会社の内情はわかりませんが)
- 社内に栄養士が複数いるため、調整してヘルプが可能
- 災害発生時の対応について社内でおおよそ決まっており、対応部署がある
- 衛生等についてのスタッフ教育のルール・媒体がある
- 店舗が多ければ知識もあるため、設備などの相談もできる
- トレーサビリティについて、社内でわかっている
働く上では安心感は必要だと思います。
誰かが欠けたら運営できない現場は、不安を感じることもしばしばです。
通常の給食運営
- ベースのメニューが豊富
- 健康に特化したイベント、有名店や有名シェフとのコラボの実施など、色々なイベントがパッケージになっている
多数の店舗での実績があれば、参考になるメニューも増えていきます。
2つ目に挙げたイベント関係については主に産業給食です。飽きがこないようなイベントが実施できます。メニューレシピだけでなくPOPもセットになっていることが多いです。
食品衛生関係
- 社内に食品衛生専門部署があって相談が出来る
- 食品衛生事故などの情報共有がある
- 社内に衛生のルールや、指針があり、それに添った媒体がある
食品衛生に関して、自分一人だけで情報収集するのは大変です。しっかり調べようとしたら、衛生に関して検索したり、厚生労働省のHPをチェックするなど自分から情報を取りに行く必要があります。これが苦でなければ良いですが、通常業務平行なので私は大変だと感じました。また、得た情報を発信していくのも大変なことでした。
過去に提供したことのあるメニューでも衛生的な作業ができていない事があります。衛生的な作業ができなければメニューの実施を見送ります。衛生に関して詳しくない方の要望は時として非常に困ります。以前提供したことのあるメニューの要望に、衛生的な理由で出来ないと言うと「何故できないのか」という事を言われたりします。
例えば、作業台を分けなければいけない作業があります。下処理・加熱加工前・加熱加工後などですね。同じ作業台を使わざるをえない際にはせめて洗浄・消毒が必要です。ですが、台の洗浄・消毒は時間的にも物理的にも無理という状況です。そのため衛生的な手順が踏めないため安全でないという理由を言ってもなかなか納得してくれません。
こういった時に会社対会社であれば「衛生ルールでできないんです」とお話すると「色々あるんだね」と納得してくれたりします。
食育のノウハウ・ツール
- 食育に関してのノウハウ・ツールがある
会社現場での栄養教室や特定保健指導、学校や保育園での食育に関してデータ・ツールがあります。
情報を探してゼロから資料作成するのはかなり時間がかかる作業です。国や保健所、市役所など色々な所が資料を出しています。それを活用する事できるので、全く資料がないわけではありません。それをどう使って組み立てていくかは自分で考えていく事が必要です。
また、社内資料であれば、活用実施例などがある場合も多いため気をつける箇所などがわかったりします。
まとめ
給食には直営と委託があります。その違いと、利点だと感じた事をご紹介してきました。
委託給食会社は給食を中心とした会社ですから専門性があります。また、データが様々で多くあり、ツールもあります。
直営給食でも委託給食会社のようにデータ・ツールが存在し、組織だっていれば、私が感じたような不安感や大変さは薄れると思います。
しかし1人現場や少数現場だった場合、データ・ツールがないこともしばしばです。
私は直営給食時代に栄養士1人現場でした。その為、荷が重いと感じる事が多々ありました。直営給食でも栄養士が複数いるなど荷を分けてもらえる現場だったらそこまで大変ではなかったかもしれません。
直営給食で働きたい!という人もいるかもしれません。ですが私個人的には委託給食で実践して学び、直営に行く・・・というルートもおすすめです。
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