「学食や社食は安い」には理由がある

栄養士
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なぜ学食や社食は安いものと思われるがちなのか

大手委託給食会社が食堂を突然の閉鎖、そんなニュースがあってからしばらく経ちました。

『「学食」「社食」は安い』そう思っている方は多いでしょう。市場と比較すると、実際に安い場合もあります。一時期、TV番組などで大学学食のボリュームや値段がクローズアップされることもありました。

では実際に、学食や社食が安いのはどういう場合でしょうか?

学校や会社が費用を負担している

なぜ安いのかの答えは「学校や会社が費用を負担しているから」です。

一般的な飲食店では、店舗家賃、水光熱費、食材費、人件費などの費用がかかります。これらの一部または全部を学校や会社が負担することによってメニューの価格が安くなります。

小学校や中学校などの公立学校給食であれば、店舗家賃はかからず、水光熱費、人件費は自治体などの負担です。基本的に食材費のみが保護者負担になります。(私立校はお弁当の場合もあると思います。)

高校以降の大学、社食の多くは条件が様々になってきます。

超低価格・無料などもある

会社であれば福利厚生の一つとして食堂を設置しているところが多いです。

費用をどの程度、会社が負担にするかによって販売されるメニュー価格は変わってきます。会社が費用を全額負担し、社員が無料で食事できる食堂もあります。

学食・社食はずっと安く利用出来るのか

会社が費用負担し低価格で食堂運営していても、業績が悪くなると福利厚生費が削られる事もあります。すると食堂の補助が減額される事があります。それによってメニュー価格が高くなる場合もあります。もちろん補助の減額だけでなく食材費や人件費が高騰してくればメニュー価格に転嫁されることもあるでしょう。

大きな会社であれば現場によって食堂があったりなかったり、差が出てきます。こうした際には差額相当の食事補助費が出ることもあります。

費用負担の弊害

小・中学校や学生寮、職種上外出できず社食利用必須の現場以外では、学内や社内にいる人全てが社食を利用するわけではありません。

大学学食が安い場合、経費が学費に含まれることが多いです。学生によって講義のタイミングやキャンパスが異なり、全員が同じように学食を利用することができません。このため、不公平感を持つ場合があります。

食堂は利用しないから学費から食堂運営費を出さないで欲しい、社食に福利厚生費を使わないで欲しい。このような声を聞いたこともあります。

委託給食が困りやすいこと

大手委託給食会社が突然給食を提供できなくなった事が大きな問題となりました。

報道を見ていると主に寮など学校の現場が多いようです。

私自身、寮の現場を経験しているので、かなり困った事になっただろうなと言うのは肌感覚でわかります。即協力した近くの飲食店さんは凄いとしか言えません。

勝手に値段を上げることはできない

基本的に給食業者は勝手に値段を上げることは出来ません。直営給食(委託しないで社内に専門部署がある)であっても値上げには許可が必要になってくると思います。それでも今回のような物価高騰であれば相手が企業であったらまだ話が通じたのではないかと思います。行政、中でも頭の固い部署・担当者だと相談が通じない可能性もあるのだろうなと思います。

価格を上げるというのはどこの現場でも嫌がられます。クレームにも繋がります。

もちろん町中のお店も集客に直結しますので、値段を簡単に上げる事はできませんが・・・。

努力や工夫が足りないというは無茶ぶり

コロナ禍以前は、もっとボリュームを、もっと良いものを、もっと安く、といった声が多かったように思います。コロナ禍以降は様々なものが値上げされてきました。

「企業努力では吸収しきれない」という言葉もよく聞かれました。材料の費用が上がれば必然的なことです。それでも価格を維持しろと言われたら、容量を少なくするしかありません。

しかしそんな中でも物価高騰初期には、給食の現場で「栄養士の力のみせどころ」という発言があったなどの言葉を見かけたりしました。

以前から給食業界ではそのように言われる風潮があります。委託給食の場合、補助を下げられた上で「値段を守るのはおたくの会社の仕事」などの意味合いのことを言われたりします。会社や学校の費用負担についてご存じない方からは「なぜ社食(学食)なのにこんなに高いのか」とぼやかれた事もあります。錬金術師ではないので、何も無いところから生み出すことはできません。

ようやく、値上げは仕方のないものだと世間が理解してくれるようになってきました。

そもそも価格の概念がない

学校給食はそもそも価格の概念がありません。販売、利益を出すことが意図ではないからです。学校給食では、例えば材料費300円などで売価はありません。

昔と同じ費用で同じ物をずっと作り続ける事は不可能です。値上げが続く昨今では小・中学校給食の材料費を値上げしたり、地方自治体が費用負担をするなどもニュースに挙がりました。

給食の重要性を理解している自治体は、あまりの物価高騰に救済策を作ってくれたのだと思います。

突然給食提供中止の問題が最悪の形で噴出したのは何故か

まずは「その価格では運営できない」と撤退できなかった会社に大きな問題があると思います。営利企業としてどうだったのかと思います。ただ、急な状況変化があり、予測が難しかったというので、何があったのかなとは思います。

撤退できなかった理由に、会社の利益確保や従業員の働き口確保などの懸念材料はあったでしょう。コロナ禍で企業はオフィスの縮小などをし、同時に社食の閉鎖や縮小なども行っていると耳にしています。そうすると給食関係各社は獲得できる現場が減っているわけです。手放したくなかったのでしょう。

もう一つの問題は自治体の入札制度です。さらに食材費や人件費の高騰に、自治体が理解がなかった事が問題だと思います。

学校給食が直営給食を減らし、費用のかかりにくい委託給食に切り替わってきたことも要因でしょう。専門の会社が運営することは様々なノウハウがあるので利点も多いです。一方で、委託した側の「費用に対する感覚」が薄れてしまったのかもしれません。

これだけ様々な物が高騰し、人件費も水光熱費も上がっているのは皆が知っていることです。現に小学校給食などでは補助を増やしているんですから。自治体や委託した側の「本当ににこの条件で安全に運営できますか?」という視点も足りなかったと思います。

安い業者に頼むという入札制度も見直すべき部分だと思います。

まとめ:「安い」というのは良いことなのか?

価格が安ければ、助かることは沢山あります。

ですが「安い」事には理由があります。「安い」事で安全が確保されなかったり、赤字経営するしかないのであれば問題です。継続できない可能性があるからです。

健全に維持されつつ、適正な価格で運営ができるように見直す事が必要です。この必要性が今回の事件で理解共有されれば良いなと感じました。

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