【保育園】調理師が保育室を見に行くことが難しいポイント

栄養士
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調理師が保育室を見に行くことが難しい・・・

保育園勤務時にやりたかったけど、出来なかったこと。

その一つが子ども達が給食を食べているのを、調理師が見に行くようにする事でした。

栄養士・調理師が子どもと一緒に給食を食べる園もあります。食事介助に参加している園もあるし、それぞれが喫食の様子を見て回れる園もあります。全く関われない園もあると思います。

私の勤務していた園では、直営給食でしたが調理師が園児の喫食風景を見に行くことが出来ていませんでした。その理由と、「こうしてみれば、どうだっただろう?」と思う事を書いていきます。

ただ、給食会社に委託されている場合には色々難しい事と思います・・・。

子ども達が実際に食べている事を見る重要性

調理師が実際に園児・児童の喫食の様子を見る事は大切だと言われています。

私は保育園勤務時、対象が近い年齢と言うことで小学校給食にも興味がありました。そこで学校給食栄養士対象の研修などに参加したりしていました。お話を聞いていると、小学校では調理師が教室に見に行く「クラス訪問」「教室訪問」があり、子どもの喫食を見に行く重要性が理解されているようでした。給食センターだと中々難しいと思いますが・・・。

「子ども達が給食を食べているんだ」という事は、もちろん皆さん頭で理解していると思います。「子ども達のために」そう思って調理されている方も多いでしょう。

ですが、実際に食べているのを見に行くと感覚が全く違うと言われています。頭で理解していても、実際に子ども達が口に入れる様子、食べている顔を見ると、色々な気持ちが沸いてくるという調理師さんのコメントを聞きました。切り方はどうだろうか、味はどうだろうか、食べやすいだろうか、もっとおいしく作ってあげたい・・・・。他にも沢山の気付きがあったりするそうです。

飲食店で「お客さんの美味しそうに食べている顔が見たい」と客席を見たり話を聞くのが好きな店員さんもいらっしゃいますよね。同じような気持ちもあるのかなと思います。

なぜ、調理師が保育室に行けなかったのか

私が勤務していた園の場合です。

栄養士は給食室の調理や片付けの状況によっては、保育室に行ける環境でした。(毎日行くのは難しかったです)

ですので、栄養士が保育室に行くタイミングで調理師と仕事を交代して見に行ってもらう事も検討しました。ですが、そもそも一緒に働いていた調理師は保育室に行くことを嫌がっていました

調理師が保育室に喫食中見に行くのが難しかった・嫌がった理由を見ていきたいと思います。他の園でも同様の事があるのではないでしょうか?

保育室に行く時間確保・タイミングが難しい

保育園は学校給食法のような法律が無く、結果、給食室が狭い事も多いです。

私がいた園の給食提供方法ですが。皿が並んだお盆(トレー)に並を給食室の提供口から保育士に渡すバケツリレー方式でした。各クラス専用の台車にセットすることができれば、給食室も保育士も少し楽だっただろうと思うのですが、台車を置ける場所はありませんでした。

片付けも同様で、バケツリレー方式で食器等を受け取る必要がありました。

そうすると、0歳クラスが食べている時に5歳クラスの対応をするなどの必要性があり、給食室を離れるのが難しいというのが現実でした。さらに5歳児クラスの提供対応後には、0歳児クラスの食器の返却があったりします。

また、子ども達の午前の活動は日によって内容が違います。給食を取りに来る時間は基本的には決まっていましたが、ズレる事はよくあります。給食室も、メニュー内容や人員配置の点で仕上がる時間にバラツキがあり、時間に遅れてしまうこともしばしばありました。

その為、調理師が定期的に保育室に行くタイミングが作りにくかったのです。

保育園では、保育士の配置基準はありますが、調理員の配置基準はありません。

そもそも根本的な事がわからない

意外と基本的な部分も難しいです。ただ「見てくる」だけといっても実は難しいです。私も最初はそうでした。そもそも、自分がやっていた事が正解かもわかりませんしね。

どうやって保育室に入って「どのくらい」「どうやって」「なにを」見てくればわからない。どう声かけすればいいのかわからない。どのタイミングで保育室を出てくればいいのかわからない。

全てに不安があったりします。

自分のせいで子どもが怒られた

長く勤務する調理師に話を聞いたところ、以前は登園児童が少ない土曜日には一緒に給食を食べたこともあったそうです。子ども達は給食を作ってくれた人が来たので、嬉しくてお話に夢中になってしまったんです。そこで子どもが保育士から「しゃべってばかりいないで食べなさい」と注意されたんですね。「自分がいたせいで子どもが怒られてしまった」と、その調理師はショックを受けました。

私も保育園に勤務し始めた頃に同様の経験をしました。私もかなりショックを受けました。

慣れてくると「食べているところ見せて欲しいな~」など食事するよう誘導できるようになりましたが・・・。なかなかにショックは拭えませんでした。

人見知りで泣かせてしまう

幼い子どもは、人見知りの酷い時期があります。知らない人を見ると泣いてしまい、給食を食べる事などできなくなります。これも申し訳なくなる事柄です。

「自分のせいで泣いてしまって申し訳ない」と思わせ、足が遠のく現象です。

調理師同士に遠慮がある

保育園だと、土曜日出勤もあるので、平日に振休がある事もあります。もちろん有休なども入ってきます。

調理師が複数人居る場合、調理する担当場所を交代制にする事も多いと思います。調理担当を決めても、振休が入ると調整が必要になるんですね。その為、保育室に行く順番も偏ってしまうのではと考えてしまっていました。

給食内容について聞かれたら困る

何か聞かれて答えられなかったられなかったら困る、という認識も持っていました。

これも経験のある調理師が、調味料の作り方を急に聞かれて困ったという話をしていました(保育士から振られたそうです)。当日調理した料理の手順はわかるけれど、野菜の栄養とか、メニュー名の由来とか聞かれたら。正直、それは私も困る時があるだろうなと思います。

経験の浅い調理師はそれを聞いて、保育室には行きたくないと言っていました。

業務を大変にしてまで行きたくない

これが最大の問題かなと思います。

今ある業務以上のことを、やりたくないという本音です。確かにそれはあるでしょう。

調理は体力仕事です。厨房や給食室というのは、暑い時期には火の使用でさらに暑く、寒い時期には冷たい水でかじかみさらに寒い、大変な仕事でもあります。

これは調理師に限ったことではなく、栄養士や保育士、その他の業種でも考えられることです。必要性は理解できても、見返りなく忙しくなるのは嫌だと感じるのは当然とも言えます。

私も保育室に行くためには、色々努力しました。大変さよりも重要性を感じていました。でもこれは人それぞれです。

なぜ調理師に、子ども達を見に行って欲しかったか

法的な位置づけ

厚生労働省が出している「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針」に以下のような記述があります。

保育所保育指針における保育所における食育とは?

保育所における「食育」は、保育所保育指針を基本とし、 「食を営む力」 の基礎を培う ことを目標として実施される。 「食育」の実施に当たっては、家庭や地域社会と連携を図り、 保護者の協力のもと、 保育士、 調理員、栄養士、看護師などの全職員がその有する専門性 を活かしながら、 共に進めることが重要である。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001j4t2-att/2r9852000001j4za.pdf

給食の調理も専門性を活かした事です。この他に身近な職業の紹介として調理師という職業の人のお話を子どもが聞くというのも大切な経験です。

「食育」というと、栄養士の仕事と思っている調理師さんも多いように感じますが、調理師も食育に携わる大事な専門職です。作るだけでなく、見に行くことが可能な場所にいるのならば、見に行くことも大切だと思います。

小学校給食調理員に関しての論文

学校給食調理員の食育活動参加の有無と食育及び
衛生管理意識に関する項目との関連

(略)

4.考察
本研究の目的は、調理員の食育活動参加の有
無と食育及び衛生管理意識に関する項目との関
連を検討することである。その結果、年に 1 回
以上食育活動に参加している食育活動参加群の
調理員は、全く食育活動に参加していない食育
活動非参加群と比べて、正規職員の者、自校給
食方式に勤務している者、栄養教諭等の職務内
容を認知していると回答している者で有意に高
かった。

https://mejiro.repo.nii.ac.jp/records/1867

こちらは「学校給食調理員の食育活動参加の有無と食育及び衛生管理意識に関する項目との関連」の論文内にある考察の一部分です。この文章以降には、調理員が食育活動に参加したときの良いと思われる効果について論じられています。

学校や保育所の日々の食事に関してや、調理師の参加についてもっと論文や文献、公的資料があると、効果や利点に関して示しやすくて良いのですが・・・。なかなか見つからないのが実情です。

保育士からも希望

「調理師さんも来れないですかね・・・」と、保育士からもたまに話がありました。

子ども達に、ご飯を作っている人の顔を知って欲しい、お話して欲しい。そういった要望です。これも調理師に伝えて、作業交代しながら、なんとか行けるようにしないか相談はしたのですが・・・力不足でした・・・。

私の個人的な願い

調理師も、子ども達の様子を見に行って欲しい。これには上で書いたように、色々な気付きを得ることができるから、行って欲しかった点が一番大きいです。

同じ物を見て、聞いても、人が気付くポイントや感じる事はそれぞれ違います。私は気付いたことや子どもの様子は、調理師に伝えるようにしていました。ですが、私の着眼ポイントだけでは事足りない事もあったと思うんですね。そして、人間は話を聞いただけでは記憶に残りにくいんです。

別の人が見て、聞いたら、もっと違うことが見えて、感じて、改善できる事があったのではないかと思うんです。

そのほかにも、園の職員であることを認識して欲しいと言う部分もありました。給食室から出ないと、給食を作っているだけ、園の事はよくわからない、で終わりがちです。

どうすれば良かったか

保育園を退職してから余裕が出来て、今になって考える事もあります。

ただ、勤務していたときには時間も心の余裕もあまりありませんでした。栄養士は1人仕事の場合が多いです。栄養士がもう1人居て、考えが共有できる人だったらと・・・よく思っていました。

調理師への伝え方の工夫

食事風景の動画を撮って、見せてみても良かったかなと思いました。実際に保育室に行く前に、まずはハードルを下げる事も必要だったかなと思ったのです。動画は園内のみで閲覧可能、LINE等で共有しない等プライバシー保護を考える事も大切です。

どうにかして、興味を持ってもらえたら良かった。と思うのですが、下手したら「動画でいいじゃないか」と言われてしまいそうだなとも・・・思いますが。

調理師に喫食の様子を見る重要性に気付いて貰うには、本人が講習会で話を聞いたり、別現場で実際に見に行っている調理師の話を聞くことが一番なのかなと思います。

栄養士とは基本的に業務内容(給与についてもよく言われたんですが)が違う事が多いです。栄養士の立場から話してもなかなか難しい事柄もあったりします・・・。

調理師の心配事をなくす

例えば、質問されたら困る・・と言う場合には、回答を用意しておくことも一つです。

「今わからないから、調べてみて、こんど教えに来るね」「皆にわかりやすいように、今度説明の準備してくるね」とか。後日行けば、子ども達は意外とよろこんでくれます。ですが、そのような対応が苦手な人もいます。保育士にも理解してもらっておく必要があるかもしれません。

また、子どもが怒られてしまうという心配がある際も、保育士に話しておく必要があります。

「お話ばかりしていないで、食べる所を見せてあげよう?」と保育士から子どもに促してもらうようにするといいと思います。慣れれば、調理師も自分で子どもに言えるようになるでしょう。

最初の2・3回までは栄養士も一緒についていって、おおよそこんな感じで見て回っているという事を伝える必要もあると思います。

周りを巻き込む

栄養士の立場から話して難しい場合は、上司を巻き込む事も重要だと思います。

園長が食に興味がある場合は、調理師も保育室に行くよう一緒に動いてもらえる可能性が高くなります。園長の指示であれば、しぶしぶでも、見に行くことができるようになるかもしれません。

また、保育士で熱心な方がいれば、協力してもらうことも可能かもしれません。

伝わらないこともある

どう説明しても理解してもらう事が難しく、気持ちが伝わらないこともあります。必要性は理解してくれても、実際に行動を変えることができるかは別問題だったりもします。

今までやっていなかった事を追加したり、変えたりする事は非常に大変です。複数人の調理師のうち1人だけは見に行きたいと考えても、なかなか上手くはいかないでしょう。また、もしかしたら、調理師以外の人からも余計なことをして・・・と思われるかもしれません。

人手不足であれば、なおのこと、数字として結果に出ない事への取り組みは難しいです。ただ仕事を追加されて大変になってしまったと思われる可能性も高いです。

ある程度、話をして動いてみて、乗り気で無ければ諦めることも必要だと思います。無理強いしても、お互いに良い事がないからです。

もし、この点について理想を追うには、最初から調理師も保育室によく行くような園に転職した方がいいかもしれないです。「食育」をどう捕らえているか、園の実施状況はどうか。イベントより日々の食育を大事にしているかなど、面接で確認できたら良いのだろうなと思います。

今回は栄養士の立場で書きましたが、調理師さんで悩んでいる場合もあるかもしれません。内容は違ったも似たような構図で悩む異業種の方もいるかもしれません。どこまで頑張ってから引き際を見つけるか、難しいですが、決めておくと良いんだろうなと思います。

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