先日、Yahoo!ニュースで見かけた、卵アレルギーの事故についてです。
食物アレルギーの事故概要
食物アレルギーの事故概要としては・・・
- 同級生の「かき玉汁」の入った食器に触れて卵アレルギーの低学年児が症状を出した
- 児童が担任に報告した際、発しんが見られ、痒みを訴えた
- 担任から保護者に連絡
- 1時間後にかけつけた保護者が薬を服用させたが、すでに全身じんましんが出ていた
- 軽い咳の呼吸器症状も見られたことからエピペンを注射、病院に運ばれアナフィラキシーと診断
- 市のマニュアルでは、軽度のかゆみなど症状があれば5分以内に判断して内服薬を飲ませるとあったが、飲ませていなかった
- その後、該当児童は給食を食べる事が怖くなり登校できていない
- 保護者からは「問題から2カ月が経っても、学校側から被害児童のケアが全くなされていない。一刻も早く子どもが学校に行けるように、日常生活を取り戻すために、本人のためにケアをしていただきたい」という訴えがある
こちらの記事の題名が『給食の“かきたま汁”の食器に触れアレルギー症状…児童の保護者が学校側にケア求める「苦しくなった時に誰が助けてくれるのか…恐怖心ある」』というものでした。
記事は以下です。
基本的には重いアレルギー症状が出る場合のみ、エピペンが処方されます。それだけでも該当児童には食事時間には気をつけてあげないといけない状況です。
ヤフーコメントの反応
ヤフーコメントの要約
この記事へのコメントですが
- アレルギー対応を学校に任せ過ぎでは?
- 保護者が来て見ていてはどうなのか
- もう少し子供が自分で自分を守れるようにしないといけない
- わが子が原因にならないか不安、同じ教室で食べさせるのは怖い
- そこまで重度なら保健室など別の場所で食べたほうが良いのでは?
などがありました。
コメントから思うこと
コメントのお気持ちはわかります。
自分やわが子が、お友達にアレルギー症状を起こさせる原因になったらと思うと不安ですよね。学校の先生も多忙です。全てを見て行動することはできないかもしれません。
先生にも児童にも個人差がある
この事例ではアレルギー児童は低学年ということです。でも、先生にちゃんと報告できています。
薬やエピペンは児童所持でなく、保健室などに保管することが多いと思います。学校によって多少の差があると思うので、ここはどうなっていたのでしょうか。もし保健室であれば、これらを持ち出すには少なくとも誰かに報告相談することが必要なはずです。
子どもは薬を飲むことも、エピペンを打つことも、練習していてもパニック状態になればできない可能性があります。
でも、これは先生も同様です。今まで出会ったことのない事例であれば焦ることもあるでしょう。
事故の問題点
マニュアルがあるにも関わらず、実行されなかった
市から「軽度のかゆみなど症状があれば5分以内に判断して内服薬を飲ませる」というマニュアルが出ていたのに、実行されていません。
該当児童は多分、保護者に言われていた通り、先生に報告しているんですね。低学年児ともあります。
しかし残念ながら、先生は決まり通りにできてなかったわけです。でも、薬の服用をさせることができなかった担任を責めるわけではありません。遭遇したことがないことで、人は焦ってしまうと思うので。
アレルギー案件は、緊急事態と同様で周りの助けが必要です。判断がつかないなら周りの先生、校長や養護教諭、栄養士などに担任が助けを求めた方がよかったです。これができないのはちょっと問題です。
自分が助けを呼べないのであれば、クラスの子供に「〇〇先生呼んできて!」とお願いしてもいいわけです。
これは食物アレルギーだけでなく、緊急対応の問題
食物アレルギーが原因なので、そこに目が行きがちです。
でも、これは緊急対応の甘さでるとも考えないといけません。
何らかの体の異変を先生に訴えたのに、問題なしと判断され帰されて、保護者が病院に連れて行ったら骨折していたとか熱中症で危険だったなどの事故のニュースも見かけます。
これと同様です。この学校は緊急対応に問題があると言わざるをえません。
食物アレルギーがあるから、その子が気を付ける・・・というのもあるんですが、それだけではないんですね。これが熱中症の対応としてだったら同じ感情になるでしょうか。
なんらかの別の理由で、児童が苦しいと、困っていると訴えたことが、放置されてもよいのでしょうか。
記事の題名にある「苦しくなった時に誰が助けてくれるのか…恐怖心ある」というのは、原因が食物アレルギーに限ったことではないと思うんです。
その後の学校の対応
その後の学校の対応がわからないので、一概には言えないのですが・・・
該当児童が給食が怖くて学校に通えないのであれば、ヤフーのコメントで皆さんが書いている通り、別室で食べさせるなどの対応は打ってもよいと思います。給食に卵を使っていない日があれば、「今日は卵の給食ないから大丈夫」と話して行かせるとか。
ただ、先生に報告したのに対応してくれなかったことが、かなり心に傷をつけたかもしれません。
あと、コメントには”保護者の不安が子どもに伝染している”というのもありました。これも、あてはまる可能性が高いと思います。
保護者と子供と先生で、どこまで自分でできて、どこまで学校ができるのか、もう一度しっかり話し合いをすることが重要だと感じます。
今後の対策は?
そもそも「かきたま汁」の提供は必要なのか?
私は、この事故の話を見て「かきたま汁」は提供の必要性があるのかと思いました。タンパク質が足りないなら、ひき肉やハムなどを入れたら良いと思いました。数字上、卵の喫食をさせたいなら、別の日の卵料理に卵10gくらい多めにすれば良いと思います。
これは栄養の面では大きな問題ではないです。
様々な料理を提供するというのも学校給食の大事な部分ではあるんですが「かきたま汁」はそこまで大切かなというのが私の考えです。(あくまでも私の感想です)
最近ではアレルギー事故防止のため、学校や保育園の給食では蕎麦、落花生、キウイフルーツなどは提供されなくなってきました。重篤なアレルギーが出るし、絶対に食べないといけない食品ではないからというのも理由の一つです。
卵に入っているアレルギーを起こす物質であるアレルゲンは、加熱状況で大きく変質します。熱をしっかり通す方がアレルギーが起こる危険が少なくなります。かきたま汁は、熱の入り方が弱い調理法です。また、アレルゲンが水分にも出て行きます。さらに汁物は、こぼす可能性と飛び散ってしまう可能性があります。
学校給食で卵の提供をやめるのは、現状では難しいと思います。ですが、調理法は検討した方が良いでしょう。これは児童、保護者、教員の安心感につながると思います。
給食献立が、市で作成され給食センターで作成されている状況であれば、すぐには対応できないかもしれません。ですが、自校式であれば比較的簡単に変えられると思うんですね・・・。重い症状が出る児童が在籍している間は、調理法によっては献立に組み込まない等の対応も一つの方法です。
じゃあ事例が牛乳アレルギー児童で、シチュー提供はどうするのかと言われると痛いところです。今回はあくまで「かきたま汁」と必要性についてです。
以下、2点は「学校給食における食物アレルギー対応指針」からの抜粋です。
使用する頻度を検討する必要がある食物
(ア) 特に重篤度の高い原因食物:そば、落花生(ピーナッツ)
学校給食での提供を極力減らします。提供する際は、使用するねらいを明確にし、使
用していることが明確な料理や料理名とします。
(イ) 特に発症数の多い原因食物:卵・乳・小麦・えび、かに
次のように提供方法等を工夫します。提供する際は、使用するねらいを明確にし、使
用していることが明確な料理や料理名とします。
・できる限り、1回の給食で複数の料理に同じ原因食物を使用しないように配慮します。
同じ原因食物の使用は最小限とし、対応を単純化します。
調理等の工夫(例)
栄養教諭・学校栄養職員等は、献立を作成する際は、原因食物の混入を防止し、複雑で煩
雑な調理作業とならないように、作業工程表や作業動線図で確認します。
(ア)原因食物を使用しない調理方法にします。
例:唐揚げ、かき揚げ、フライの衣等で、小麦粉のかわりに米粉やじゃがいもでんぷんを
使用する
かき揚げや、フライの衣等に卵を使用しない
担任の報告まかせでなく、ほかの人も見に行く
文部科学省は上記の指針の中で「食物アレルギー対応委員会」を設置し、組織的な対応をするように周知しています。
一方で、「組織的に」と言葉で言っていても、現実に伴っていない場合もあるのだろうと思います。
環境的に報告系統のスタートは、担任が報告をすることになりやすいです。ですが、それでいいのかと個人的に感じます。
担任の先生は、教室内で注意するべきことがたくさんあります。
また、マニュアルがあるとはいえ、全てを覚えて実践することは難しいこともあるでしょう。担任が報告しに行くのが難しいタイミングだってあるでしょう。また、報告・相談しにくい場合もあるかもしれません。
そのため、学校内でもう少し気を付けてあげることも必要だと思います。担任が報告に行くのではなくて、別の先生が巡回して様子を見にいくわけです。担任にすべてを背負わせてはいけないんです。
校長先生や副校長先生、教頭先生など、お忙しいでしょうが、クラス担任になっていない先生が見回ることも一つの方法だと思います。アレルギー云々だけでなく、子供の食事の様子は見た方がよいことです。
学校に栄養教諭や栄養士が在籍している場合にはクラスを見て回ることもあると思います。
ただ、話を聞くと栄養教諭や栄養士は業務の進行状況や、人間関係などなど、クラスを回るのが難しい現状もあるようです。また、給食センター所属の場合、担当の学校が複数あるので毎日見に行くことは不可能です。
学校全体の問題と認識して、担任以外の誰かが巡回できるように人員調整までをトップダウンで決めていくことも必要なのではと感じています。
マニュアルを守れなかったことより、どうしたらマニュアル通りに動けるのか環境の見直し、そもそもマニュアルに無理がないか、を考えることも重要です。
子供の安心感を取り戻す
この事例では、先生や学校に対して漠然とした不安が、アレルギーの児童に残っているのではないかと思います。
記事の文字だけ読めば、先生に話したにも関わらず、1時間もの長い間、何もしてくれない状況だったわけです(実際には声かけ等行っていたとしても)。全身にかゆみが少しずつ広がり、喉も違和感が出始め・・・不安だったと思います。
この不安と恐怖は、なかなか拭えないのではと感じます。
また、保護者が不安がっていて、その不安が子どもに伝染しているという指摘通りの可能性もあります。多分、両方なのだろうと推察します。それ以外にも何かあるかもしれません。
別の教室で給食を食べるのか、他の先生も巡回するのか、給食ではなく弁当持参にするのか。児童自身が安心できる方法を考えないといけません。
同時に、担任が安心できる環境も必要です。アレルギー児童の対応が怖いと思わないように、周りのフォローが大切です。